309. 床に臥す父と娘の出会いあわれなりテレビの姿共に涙す
310. 父娘なれよくぞ似たるその眼もと頬すりよせる四十年ぶり
311. 夢にみし肉親会えず帰る日に祖国を踏みしと一つの笑みを
312. 孤児たちの「まあま」「まあま」の呼びかけに何故に名のらぬ涙の叫びに
313. 避難車で母の亡骸抱きつつ奇跡に生きし四十年のかほ
314. 夢にみし生みの父母いなくとも誰か身よりの名のり出でかし
315. 親さがし遅々と進まぬもどかしさ異国の別れ無残なわかれ
316. 両親を探し求めて四十年よくぞここまで育ちしことぞ
317. 幼き日兄妹たちと死別せしその悲しき様をたぐる憐れさ
319. 肉親を探す孤児らのあわれさや今亡き父母のおもかげ偲びて
320. 年老いし父母は亡くとも此の日本誰かゐる筈身よりのひとり
321. 名のられぬ事情のありて出られ得ぬ父母ありとは解せぬきずななり
322. 養父母の恩の深さが身に沁みて祖国離るるけなげなこころ
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