綾日記
鹿児島旅行


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426.  亡き夫が共に勤めし上官に遠き薩摩で初対面せり


427.  その昔戦の面
(つら)はいかめしく米寿をむかうまなざしやさし


428.  南国のさつまの宿で若やぎて赤い花柄むうむうすがた


429.  みんなみの薩摩の旅の風鈴は涼しさそへるがらすの音いろ


430.  東京のビルの庇に巣づくりの燕の運びし土いずこよりか


431.  さつき晴れ萌黄に匂う柿のやわき若葉に日の光みつ


432.  毎日の気象通報目にとめる息子らの住める仙台おおさか


433.  庭隅のコンクリート趾は鶏小屋のありし思い出子育ての頃


434.  八月ぶり土筆の会に出席し恩師友らの言の葉うれし


435.  久々のつくしの会に顔出せばなつかしの顔かほのはげまし


436.  足腰を痛みて四年久しぶり障子の張り替え出来てうれし


437.  張りかえし障子の明るさわが部屋の何年ぶりかに狭きにあれば


438.  歯の治療目かくしされて口をあけ舌も動かずライトは眩し


439.  寝台で覚悟をすれば何のその短歌もうかぶ気持ちゆったり


440.  何鳥や軒下の雪の足あとに餌をあたえてうかがい待てり


441.  ガラス越しそっと覗けばその気配にぱっと飛びたつ早業にして


442.  寒中にたまに気付ける狭庭には南天の実の歯抜けをみたり


443.  南天の赤きを食める小鳥たちこの眼でみたし餌あたへたし


444.  南天の実を食べ終えし鳥たちに熟し柿をばむすびあたえたり


445.  その柿は二日三日とその侭に紐だけなるは数日後にて


446.  子供らの幼き頃の節分は父鬼となりて豆拾う子ら


447.  柊と鰯のあたまをわり箸に鬼は外へと厄払いせし


448.  五合枡の煎り豆を持つ父の子らと戯る節分の夜は


449.  ゆく春に雨にぬれ散る八重ざくら造幣局の花の絨緞


450.  咲きてよし散るもまたよし櫻なれ雨に濡るれば風情のあわれ


451.  宮本武蔵碑の前の南天や実もたわわにて箸のつくられ


452.  名物の南天ばしを土産にす宮本村の武蔵を訪ねて


453.  何げなく求めし土産よろこばる白南天の箸のかろきを


454.  数年前今在家よりもらい来し夾竹桃の白き花咲く


455.  その頃は白珍らしく二人して芽を分けあってわれのみ根付きて


456.  芽のびせし短かき苗が生長し樹丈の伸びて花を見上ぐる


457.  鳥取に石脇名の部落あり何かのえにしとカメラにうつす


458.  石脇とうなまえの源を調ふれど識り人おらず尋ぬる術なし


459.  ひまわりの花実となりて茶の顔を朝日に向けて首たるる初秋


460.  秋晴れや胡麻の木筵にならべありわれの作りし頃のなつかしく


461.  ゼット機の爆音ひびくその風に風鈴ゆれて短冊の舞う


462.  白萩の風になびきて笑む如く塀より垂るる寺詣る道


463.  寒菊の雪をかぶりたる憐れさよそつと拂えり早き初雪


464.  この冬は初雪早くあわてたり寒菊なれば手折られもせず


465.  夜明け前雷なりて目を覚ますこれぞ初冬の雪おこしなる


466.  かみなりに目覚めてよりの一時間ひびきの止みてほっとねむりぬ


467.  満場の福祉大会の講演はたくみな手話つき一時間半


468.  手話付きの講演ききて感動す指の動きに笑みさへ添えて


469.  講演中の一時間半一心に手話する人に引きつけられて


470.  盲聾者指と指とで話し合う障害同士の指の確かさ


471.  テレビにて指点字する若人は希望にもえて大学院へ


472.  盲聾者を導く女のやさしさや指をふれあい指での会話


473.  今年また赤く実のりし南天の歯抜けとなりて小鳥の餌して


474.  さ夜目ざめ師走の空の満月のカーテン明かしガラス戸越しに


475.  始発バス足弱きわれ一人にて乗りて座すを待ちくる運転手


476.  亡き友の弟さんに巡り会いアルバム見ては六十年前を 
(日本海新聞の私のアルバム掲載)


477.  新聞に掲載されしわが記事の反響の如何に大なるかを知る


478.  意外にも記事の反響におどろきぬ看護婦からも新聞届く


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