綾日記
夫の思い出

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39. 除夜の鐘聞くや来る年の初詣うで夫と二人で松林みち
 

40. 珍しく夫婦づれでの初詣うで最後となりて思いでを追う
 

41. 社前にて二人で振りし大鈴の上を見上げて鈴の音を聞けり
 

42. 社殿でお祓い受けて神妙にかしこみ聞ける宮司の祝詞
 

43. ほろ酔いでうたう夫との帰り道支えるわれもよろめき乍ら
 

44. 亡夫在らば共に過さん五十年密かに金婚を思う
 

45. ひとり居を気楽に暮らす老いの身に亡夫の計らいありてこそぞと
 

46. 若き日の夢は破れて老いの今独居なすとは夢思わざりし
 

47. 服従を妻の道とてわが夫婦老いなばややにゆるみしかやと
 

48. 久々に夢で逢いたる亡き夫は何故に沈黙(も)だすやおもかげを追う
 

49. 在りし日は酒を友とす夫なりし肴のさしみ毎晩つづけし
 

50. 夫逝きて十七回忌をむかえたり在りし日偲ぶ酒のさかなに
 

51. 息子らにきびしき父たればこそ逝きて思わる躾のことども
 

52. 今の世に合わぬなりとも妻の道われは尽くせり夫唱婦随を
 

53. 今世代男女同権叫ぶとも夫を敬う心欲しきとぞ
 

54. 夫あらば喜寿をむかえる年なるに還暦のとし逝きし人なり
 

55. 海ゆかばのうた声聞きて涙しぬ戦艦大和の海の墓標は
 

56. 海ゆかばのうた聞くにつけ杳き日に亡夫がうたいし館山の別れ
 

57. フェリーも夫と共なら外に出てあちこち眺めたのしきものを
       (浦賀より船にのり館山へ)
 

58. 館山の訪ればなし共々に語りあえずにわびしくかなし
 

59. 亡き夫の奏でし音色尺八の手入れもせずに二十余年過ぐ
 

60. 手入れなき尺八あわれなつかしく竹筒かでて音色を偲ぶ
 

61. 終戦時真二つに折りし軍刀の木箱にねむる四十数年を
 

62. 夫亡き後宝刀の所以も分かず手入れもせずに刀錆びおりて
 

63. らばうる基地に掲げしとう軍艦旗持ち帰りたる手縫いの朝日
 

64. 軍艦旗一畳半の大きさで厚地の毛織太目の縫い糸
 

65. 大切に保存の旗の持ち難く資料室へと保管を頼む
       (賀露公民館)
 

66. 横須賀は戦中十年を暮らせし地にてわれの第二のふるさと
 

67. 若くして世帯知らずのわれをして人生経験を身につけし
 

68. お陰さま横須賀館山の住み人とむかしを語る五十年のこと
 

69. 親子二代にわたる誼には亡夫の恩恵のありてぞと思う
 

70. いつの日か夫と二人でと願いしもひとり訪うわびしさを思う
 

71. 在りし日に帰省の息子と碁打ちして兜(かぶと)ぬぎたる父のやさしさ
 

72. 父亡き後帰省の度に兄弟で碁に向いては食時(しょくどき)過ぎて
 

73. 就職後は会うことも少なき二人なれ碁石の音の聞けなくなりて
 

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