綾日記
雑想


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323. 冬至菊芽を二ヶ月ぶりに陽にあてて菊のけなげさ沁々感んず


324. 沈丁花雪の中より蕾を抱き香りを包む春待ちがほで


325. 春やよい小鉢の菊の冬至芽がうす陽を浴びて息吹く気配に


326. 菜の花は春よぶ香りそのつぼみ食にそえてはみどりの色を


327. ねこ柳春陽をうけて風にゆれ猫の尻尾や銀ねずみ色


328. 春めけばちり紙交換竿売りのかしましく通る町はずれ道


329. 日に日にと南天芽ぶきてわが狭庭あかき細枝花芽を抱きて


330. 狭庭にて八ツ手の新芽め吹く様やわき手のひらそっと開きて


331. 西大寺の八千人の闘いをテレビは映す裸のまつりを


332.  西大寺のはだか祭りや福男宝木持ちたるおとこの力


333.  八千の顔の競い合う渦巻きの裸のおとこの力のまつり


334.  赤い羽根募金に立ちて縁起よく先づわが箱にぽんと入れたり


335.  赤い羽根おねがいしますと頭さげ顔を上げれば通りすぎており


336.  十年余募金に立ちての楽しみは銀行で開く箱の中身ぞ


337.  紋付の老婆とならび写真とる敬老会に仲間入りして


338.  古希のわれ米寿の媼と母のごと親しく過ごす敬老の日を


339.  敬老日心ひそかに待ちたれどわびしさよぎる案内状来れば


340.  清々しラジオ体操にはげむ子らかけ声ひびくいちにいさんと


341.  体操に集る子等の早やばやと出席表を首にさげいて


342.  兄達の体操に行けば同じよに幼き妹カードをぶらさげ


343.  郵便局を見学し始めて知れり郵番号の太き字きらうを


344.  物言わぬ機械なれこそ正確に郵便番号を書くべきと


345.  街路樹に枯葉一枚ぶら下がる近づき見れば蓑虫の巻きて


346.  コスモスが色とりどりに咲き満ちて土手一杯に秋を匂わす


347.  如月の終りに雪の降り続く寒のもどりか名残りの雪か


348.  降る雪が見るだけならよいものをと老婆呟く待合室で


349.  祭りの日軒連ねたる〆縄のご幣は雨に濡れ落ちんとす


350.  円高と円安と云う文字のあや老いの頭ははたととまどう


351.  週一度バス停までの道すがら腰やすむ石に蔦の伸びおり


352.  バス停で傘さしてくれる若人のやさしさうれし乗車口にて


353.  鳥取の味を感ずる心地して読みごたえある知恵ぶくろの本


354.  生活の知恵袋本なつかしく六十五年前の遊びうたあり


355.  幼き日われも同じく思い出の大正時代の事どもありて


356.  老いてなお吾子の戦死を偲びたる米寿の媼の嗚咽の声を 
(小川せいさんのこと)


357.  暖冬の春日に恵まれ大樹荘つくし短歌の年始の集い


358.  土筆会湖畔の宿に集い来て大寒の入りも暖かく過ごす


359.  新館で今宵の月見のことさらにつくる団子の味まろやかに 
(二区公民館で)


360.  年毎に集う月見の賑やけきすすきの穂かげに卒寿の媼も


361.  すすきの穂やわくしっとりと潤い見せて大壺の中


362.  芒の穂風になびきて土手の上に野菊も咲きて明月近し


363.  秋深し柿の生り年バスの窓枝もたわわに朱色に冴えて


364.  靄かかる朝の伊勢宮詣づれば小砂利の道に鶏の二三羽


365.  絶景の瀞八丁巡れば船の上は三重と和歌山の川巾にあり


366.  から梅雨にあじさい咲きてあわれなり色変わりつつ雨待つ気配


367.  空つゆの墓前の水に雨蛙潤い欲しやと雨乞うるらし


368.  若き頃脚もろきわれ子育てを無事に終えては来し方を思う


369.  夫婦なれ介護の逆はあわれなり夫が妻着るすがたあわれに


370.  寅歳の年の始めを寿ぎて丙寅の絵を書きてながむる


371.  ひのえとら押し絵につくる表情の愛らしく見ゆ下手なる故に


372.  暖冬に誘われたるか裏庭の八重咲つばきほころび始めぬ


373.  裏庭に昨日見付けし椿花手折りしあとの今朝の雪かな


374.  窓ぎわの一輪挿しの大椿見る間の一瞬ぽとり音のす


375.  春の蝿日射しの窓に迷いこむ動きの鈍き大き一匹


376.  朝の道集団登校のあいさつにおはようございますとは面食らうなり


377.  雨の日に母におくれてよちよちと振りかへり見れば傘が歩くよな


378.  赤い合羽と傘に黄色の靴の愛らしすがた小雨の歩道


379.  幼児の待ってと言わずゆっくりと母のあとから傘さし歩く


380.  双子媼きんぎんの名に並らび座すテレビに映る百歳百歳


381.  百歳のきんぎん二人並らびてはちんと座りて置物のごと


382.  二人共耳がきこえて話し合う姿やさしく微笑ましくて


383.  きんぎんさんよくよく見れば銀さんが姉さま顔できんさん幼な顔


384.  歯なしがほ並らび座しての百歳は百番百番のCMに


385.  春の雪鳥それぞれに葉にかくれ雪見せりとは東京風情


386.  枯れたやに見ゆる大幹の割れ目より新芽の出でて紅梅の蕾よ


387.  裏庭の八重咲きつばき色づきて一枝折りぬ一番咲きを


388.  春やよい土の温度で動く虫眼ざめて起きて春を知るなり


389.  啓蟄に日射しうららか虫どもが動き出るよな今年の陽気


390.  もう一つ啓蟄の日に虫這うは日脚の伸びが目安なりとぞ


391.  わが脚の人工関節五年経つあと幾年と主治医に聞けり


392.  医師いわくレントゲン良し大丈夫なりとされどわれ案んず


393.  世評では十年程ときくなればならわし飛ばし頑張らねばと


394.  新聞の訃報の年齢を見るにつけ我れの年かと思いめぐらす


395.  菩提寺で朝行すれば飼いねこの耳をぴくぴく経文きくや


396.  寺の猫とら縞なれどおとなしく静かに座して朝行なかま


397.  テレビにて北海道の昆布漁みて大漁の船に驚きにけり


398.  海岸に広げし昆布の廣々と黒の絨毯の如く干されいるなり


399.  春彼岸うす陽さすれど風寒く墓洗う手の水冷たくて


400.  菩提寺で彼岸の七日ご詠歌で和尚さんと共に供養をするも


401.  彼岸中三十三番のご詠歌は寺の名に因み五七五七七


402.  ご詠歌は話すことなき一人居は声を出すことの体調良きに


403.  老老いて足弱きわれバスサービスで福祉の会へこれぞ幸なれ


404.  老いの身の福祉の会のおかげにていで湯につかり背ながしうける


405.  賜わりしマスコット犬愛らしく寮の皆さん思いて眺む


406.  入寮のおかげで歌がうたえると卒寿の翁は声はり上げて


407.  ありがたし一人居なれば福祉にて楽しみ集う健康学習を


408.  なつかしや喜寿を迎えし幼友と食を共にし記念に写す


409.  日めくりは日の歩みなりと言うべけれバサッと音の区切りなすなり


410.  日めくりを日日剥がしひと年の終りの一枚残しておきぬ


411.  日々の格言記して剥がしたる日めくり暦の一年過ぎぬ


412.  畑隅のじゆず玉実のり鈴なりの黒びかり見てうれしくなりぬ


413.  じゆず玉の黒く熟れたるを手ですごきバケツにうけばばらばら音の


414.  じゆず玉の葉先にとまる大蟷螂
(かまきり)にびっくりすれば彼もとび逃ぐ


415.  じゆず玉の大量収穫うれしくて心弾みてお手玉づくりす


416.  眼鏡なしでお手玉縫えるたのしみは天の恵みと老いの身に思う


417.  わが町がテレビに映るうれしさや北前船を迎えて祝う


418.  木の香する北前船の帆柱は太く高々と白き帆張りて


419.  海の子ら北前船を出迎えて鼓笛奏でる賀露健児のうた


420.  人なみに紙帽子かぶりて国体をみる空の碧さと帽子の青と 
(国体閉会式をみる)


421.  園児らの空に落書き書きたいなの大きな虹色広場に浮ぶ


422.  国体をこの眼でみたる会場の広がる視野は閉会式で


423.  甲子の元日朝に汀女史の八十四才の声を聞きたり 
(中村汀女)


424.  汀女史と同じくわれもおんぶして子育てせしをなつかしく聞く


425.  ねんねこは母子共ども暖かく本も読みしと汀女のはなし


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