綾日記(その三) 61−90


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61.5・30はごみ零と言う老いたれどわれも一役ごみなしデーを

 

62.老人会で佐治天文台を見学す103糎の眼は人の眼の二万のひかり

 

63.町内の大運動会老いひとりとなり近所の留守番役か

 

64.やっとこさ正体見たり小ねずみの動き眼の中に一瞬のかげ

 

65.小ねずみの眼(まなこ)の光目に残る憎らしくあり愛しくもあり

 

66.南天の白き花房雨にぬれ銀の雫はひかり麗し

 

67.円相場、円高円安の解しかねる円が上がれば円安なりとは

 

68.瀬戸内の小島の魚商姥の手に秤なつかし丸皿に紐つき

 

69.四十九才の戦後生れは丸皿の上、はい一貫目と産婆のひと声

 

70.君が代の静かに流るる映像にベッドに座してしみじみと聞く

 

71.日の丸の旗中央に金メダル下げし選手を早朝のテレビに

 

72.学童の疎開せし時の思い出は拙き食よりも親を慕いしと

 

73.残飯を集め廻りし思い出は学童疎開の楽しみなりしと

 

74.言わんにやあ死ねんと語る広島の五十一年目の涙光れり

 

75.広島の被爆せし女(ひと)沖縄のひめゆりの塔に手を合わす顔

 

76.沖縄の平和の礎(いしずえ)にきざみたる同姓氏名の四人連なる

 

77.寝ながらにラジオ体操のうたを聞く朝の十分は体操気分

 

78.ぽとんと音を確かむポスト口中身の写真孫娘たちの笑顔

 

79.孫むすめ毎日曜の朝電話におはようございますと祖母にあわせる

 

80.戦中に呉市に住みし思い出に「行っておかへり」は朝のあいさつ

 

81.大相撲懸賞旗のウン万円数本数えて掛け算するも

 

82.大相撲解説言葉のつかいわけ三文字、五文字は「のどわ」「ねこだまし」

 

83.大西瓜馬穴の中に冷やしては縁側に据えて真二つに切る

 

84.大西瓜よろこぶことと思いしに平成の子は食せずと聞く

 

85.種とりが面倒なのか若き両親が好まぬ故に子等も食せぬか

 

86.立秋に処暑と暦の日々続き朝の目覚めの毛布のぬくもり

 

87.垂るる萩むらさき色は雨に濡れ花の終りのわびしき姿

 

88.秋なかば紅葉前線さまざまに映るテレビをひとりたのしむ

 

89.雨降りに金木犀の黄いろの香傘より匂う寺詣る道

 

90.わが狭庭銀木犀の高だかと二階の窓にほのかに匂う
 

 
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