綾日記(その四) 1−30


綾日記目次へ

1.原爆記念日の遺族の黒き扇子の手仄かなる風に誰をか偲ばん


2.焼け焦げし弁当箱の黒ごはん原爆資料室の一隅にあり


3.広島の原爆記念日に続々と黄菊捧げる遺族らの顔かほ


4.ふくよかな胸もとすっきりと帯結び着物の似合う上村多賀さん


5.土筆会隣の席に足ならべお茶会楽しき思い出残る



6.親戚になりますがなと声をかけ慈母の如き歌友(とも)よ淋しきかぎり



7.ひまわりの花、花、花の黄づくめ画面一杯背高にえがく


8.ひまわりは笑顔のかほとよく似合う花びらにこにこと咲きぬ


9.偶々(たまたま)に赤のひまわりつくれどもやっぱり黄色がひまわりの色


10.坂本九ちゃんの十三回忌を報じいて九年九月九日の重なりを知る


11.飛行機の事故に遭いたる九ちゃんの「上を向いて歩こう」の笑顔を偲ぶ


12.十年振り鳥取医大病院に入院し左腕の再手術を受けたり


13.新築の八階病棟より眺むれば米子港は中海と続く


14.米子港と相向かう美保の関に点々と見ゆる夜景の街火


15.入院中初めての敬老日には赤飯鯛つき丸りんごあり


16.高校生、五十歳台らの四人部屋 われのみ祝わる敬老日なりて


17.孫むすめよりの見舞花、花籠のカーネーションはうれしき香り


18.病床で栗ご飯なり秋分の日ガラス戸越しに秋風ほのかに


19.二十三日間の入院なれど寂しきわが家にほっと一息つくも


20.東北五県の芋煮会はさかんにて小学生はいも堀り手伝う


21.里いもは三代ひとかたまりに土の中親より子いも孫いもうまし


22.三角棒で芋洗いせし母のこと桶の里いもの白き思い出


23.五十年余も使いし大鍋は手づるなべみそ味醤油味芋煮会


24.つわ蕗の花ブロック塀の根もとより大き葉の上ににこにこと座す


25.つわ蕗のビロード色の黄と緑門番のごと両側に咲く


26.ブロックの根もと石蕗の黄色の花の大葉を伸びて首を据えたり


27.ビロードの如き石蕗の黄の花と緑の大葉玄関守る


28.秋晴るるコスモス祭り平成の花一杯にゆたかなる風


29.大相撲のニュースの合間にコスモス映る色とりどりにこころ和らぐ


30.青汁のテレビCMに呑み干して眉ひそめつつ不味いもう一杯


  トップへ  綾日記目次へ

inserted by FC2 system