綾日記(その四) 61−90


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61.ほの暗きカーテン越しに拍子木の音過ぎて雨音聞こゆ


62.ひょうしぎの音ひびきくるつゆ雨の今夜は誰が廻りくるるや


63.夾竹桃の花散りて手にとれば風ぐるまのごとく廻るかな


64.夾竹桃の黄色珍しく挿木せり白と並びて咲く日を待たん


65.用ケ瀬の流しびな祭り春うらら高女生らも俵びな流す
(高文祭前)


66.幼女らのさん俵びなに赤つばきそえて春陽に浮かぶ


67.コスモスの夏も来ぬのに花咲けり背丈短く愛しきピンク


68.みどり濃き紫苑(しおん)の葉かげコスモスの一輪二輪寺詣る道


69.老いの身に花の香りの優しくてわが部屋に活けるあじさい一輪


70.就職の孫のアパートの一部屋に孫と娘と枕ならべし


71.手術あと十年経たり老いふけて骨の弱るも致し方なし


72.洋服に流行するらし夏の下駄ゆかた着の音より高いかな


73.アムロ型ハイヒール型と聞くだけに想像し難し今の流行語


74.ラジオ体操巡回地でのかけ声に手足動かすベッドの上で


75.倉吉での公開ラジオ体操は千人近しうた声響く


76.今年また敬老の日を迎う八十五才 七十才時の名簿なつかし


77.敬老会に健在なりし同年輩の人三十回忌の夫を偲ぶ


78.十月十日はさかなの日とぞ幼きころ魚をトトと言いて食べしか


79.十月十日を横にならべて眼のかたち目を大切に目の愛護デー


80.山あいを曲がり曲がりて上る道紅葉早き摩尼寺に着く


81.摩尼寺の留守番役ふたりがねそべって身の上話親しく語る


82.さよならのかたちに揺るる芒穂(すすきほ)の草叢つづく寺詣る道


83.すすきの穂ま白く光りぬ手まねきてやさしくゆらす晩秋の風


84.坂根さん笑がほの写真そのままにいついつまでも祝ご出版


85.秋桜の出版日宇宙の向井より坂根の笑がほ身近に感ず


86.秋ざくら新聞と同日夜届く速達便と間違えしとぞ


87.本届くの電話におどろきて喜びかくせずお互いさまに


88.沙羅那苑毎週集うありがたさひとり居なれば一日たのし


89.サラナ苑頂く昼食ありがたきおふくろの味うれしくたのし


90.除夜の鐘聞き乍らぱりっとめくりたる新しき暦一月一日


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