121.連休となり隣の子供らの遊ぶ声なく青葉の日射し
122.母の日を祝うが如し君子蘭三鉢八本玄関かざる
123.老人への給食うましつみれ汁山菜ごはんに笹もちそえて
124.国府町の万葉の館巡り見て和歌のいにしえあらたかなるも
125.枯れたやに見ゆてっせんの茎の先白き花二輪みどり葉つけて
126.あじさいは雨よぶ花と言うもよしつゆ雨に濡れ色さまざまに
127.八十のわれも胃の検診をうくるなり初めて見たる異常なしの写真
128.卒寿こす歌友(とも)は会うたび傘寿となるわれをまだまだ若しと
129.行商の思い出日記なつかしく見舞う輝子さん語りあえずも
130.亡き妹は石黒十二代目の位牌の端一行あけて戒名きざまる
131.看とり受け逝きにし妹は幸せと残りしその夫はいみじくも言う
132.平成の七、七、七は喜寿の年金婚式と五重のよろこび
133.七夕の思い出ひとつ米子医大で看護婦室前、笹の短冊
134.病室の孫らと共に七夕さん松葉杖にて笑顔の写真
135.鳥取港の海友館を見学し幼き頃のパノラマ覗く
136.賀露みなとの八十年来のなつかしき今は大きく鳥取港なりて
137.正夫さん生まれし頃の思い出はおめめぱっちり抱きしおもかげ
138.横須賀と思い出多き正夫さん黄泉の旅路でやあ叔父さんと
139.軒下の古机の上に寝(い)ねし猫たまに戸を開けば媚びるがに起つ
140.真夜最中(さなか)ラジオ聞くわれと同じうた猫も聞くと思へばいとおしく
141.ごろごろと雷雨まじりの夜、参院選のラジオ政見を高音にし聞く
142.吾(わ)のくらし慰めくるる猫なるにある日突然すだれより潜りこむ
143.憎たらしもぐりし猫の形相にわれおどろきて後策を練る
144.あげは蝶狭庭に咲けるひめ百合にとまりてはなれ又とまり舞う
145.サキ子さん子達ひ孫に看とられて逝きにしことの羨ましくも
(川尻さんへの弔歌)
146.うつしゑの数々ありて在りし日の思い出あらた永久の別れに
(川尻さんへの弔歌)
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