綾日記(その三) 31−60


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31.吾(わ)のくらし頂きもの有難くあげるも楽し貰うもうれし
 
 

32.元日に大黒さまと訪れるねずみのなまえ如何よぶらむ
 
 

33.この年の主役のねずみ愛らしく優しき名前「丙子(ひのえね)」という
 
 

34.日本一長寿翁(おきな)の誕生日われと同じく一月十九日なり
   (百十二才)
 

35.図らずも長寿翁と同じ日の誕生日なりとは縁起良きかな
 
 

36.本堂の読経の声寒々とねたきり偲ぶ妹の一周忌
 
 

37.老人の給食日とバレンタインと重なりてチョコレートふたつ弁当の中
 
 

38.重箱のご飯の上にハート形の人参いとしバレンタインデー
 
 

39.用瀬の流しびな二つ届きしと孫娘よりよろこびの声
 
 

40.さん俵のふるさと雛によもぎ餅とおいりをそえる用瀬の流しびな
 
 

41.赤瓦の土蔵の白壁は一瞬にブルドーザーが土煙上ぐる
 
 

42.昭和初期質蔵として質棚に楠板を使いしと聞く
 
 

43.思い出の白壁土蔵を老いの眼に残しおきたく写真をとりぬ
 
 

44.子育てのおしおきとして暗き蔵へ入れしことなど戦後の思い出
 
 

45.亡き妹は蔵を大事と守りしに若き世代には心通ぜず
 
 

46.「いじめっ子」「いじめられっ子」の問題は学校まかせより家庭にありと思う
 
 

47.中学生まで育てし命の大切さ親たらん者子に示すべし
 
 

48.自殺者は教師まかせは減らざると週刊誌に読む同感するも
 
 

49.ハタハタを漢字に書けば魚偏に神と書く平成風に神となり給う
 
 

50.冬季には酒の肴に酢づけとし不意の客によろこばれたり
 
 

51.鰰を酢づけとなしてもてなさんわが家の客の酒の肴に
 
 

52.三月の暦めくれば春めきて紙面いっぱいに紅白梅の咲く
 
 

53.春やよい近しと思へば気分よし梅暦眺めつつ炬燵に憩う
 
 

54.走らんかの汐親子の終幕をわが子育て頃と重ね見ており
 
 

55.花冷えか寒のもどりと言うべきか五分咲き桜雪をかぶりたり
 
 

56.宵まつりの〆縄御幣の清々し獅子舞の鐘朝から聞こゆ
 
 

57.獅子がしら大口あけて迫りくるわが頭思わず神妙のとき
 
 

58.割り箸の旅とう新聞記事を読む紙に変りて旅をする箸
 
 

59.続、箸の旅の記事をみてリサイクルの輪大なるを知る
 
 

60.割り箸をリサイクルして上質の紙を名刺になせしと告ぐる

 

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