綾日記 (1−30)
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1.八才も若きわが妹の病みおりて車椅子での不憫なすがた
  (平成五年四月二十五日、鹿野施設にて)

 
2.車椅子の思い出あわれわが妹の歩めぬ心情思いやるなり
 

3.春しぐれ叔母の歌集よみて亡母偲ぶ (今井文子さんより)

 
4.はる風や歌集つくりて叔母八十路 (今井文子さんより)

 
5.幼にして母逝きし姪は亡母慕い母の齢こす八十路のわれに

   (綾日記にそえて文子さんへ)

 
6.残りし子らは親になりそのよすが亡姉のおもかげ重ねて偲ぶ

 

7.父親になりたる息子父似にて母となりし娘の母のおもかげ

 

8.贈られし歌集のこころ沁々と母のおもかげ涙してよむ
   (木下登美子さんより)
 

9.健やかな老後の歌集よむ中に亡母偲びてわがうた心
   (木下登美子さんより)
 

10.母偲ぶ心情思えばわれもまた故人のすがた甦るなり

 

11.妙子さん逝きて七年孫たちの生長ぶりを見せばやと思う

 

12.祖母に似し和ちゃんみれば在りし日のおもかげ浮かび寂しきかぎり
 

13.郁ちゃんはお宮詣りをすませてのお別れなれど早や六才に

 
14.一粒のさくらんぼ食み笑顔の孫娘われの一粒また喜びて

 
15.幼孫はさくらんぼの種をまくと言うさくらんぼなるかなと呟きて

 
16.さくら咲く卯月の季節花冷えの水の冷たさ朝餉のしたく

 
17.明け方に雨音きけば気の迷う今日のうた会バス無理かなと

 
18.あいにくの雨降りつづく行楽日花の満開傘もまんかい

 
19.室生寺はしゃくなげ咲くも雨のなか拝観の女(ひと)の傘色さまざまに

 
20.空き缶で学校建ったとテレビにて中学生の笑顔のはなし

 
21.わが実家の思い出の池埋めると聞く七十年前の大牡丹の詩

 
22.小三の頃ぼたん笑うと書きし詩を褒めし先生のおもかげ偲ぶ

 
23.そのむかし金魚の孵化を教わりしめがねの人は松本先生

 
24.棕櫚の毛に孵化せし稚魚に鶏卵の黄身すりつぶし育てし思い出

 
25.戦後には池のまわりに皐月咲き花見たのしく賑やかな思い出

 
26.夏支度にすだれ出したるわが陋屋暑さ感ぜぬ梅雨冷えの晝

 
27.思い出の歌集出版うれしくも腰痛おこり体力弱る

 
28.歌集出し心のゆるにみ反省す師の言葉には身に沁む思い

 
29.腰痛は来るもの来たと考うなり手術後の五年間感謝す

 
30.久々に赤子田(あこだ)の施設に友見舞う涙の顔にわれも涙す

    (木村チエ子さん)

 
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